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トラクター

トラクターがくったくたーになるまえに
この俺がくったくたーだ

らくらくちんちんのトラクターに乗っているのに
なぜくったくたーになるのだ
こんな夢のような機械に乗っているのに
汗水流してクワで悔恨に励んだご先祖様に申しわけない

キーを回すと ぐわんがらん と始動する
ぐっ オーオー と走りだし 田んぼに着いたら
田起こしだ
むっ ぐおおー と一段と力が入る
ロータリーの爪が回転してズバズバと土を砕き
草を土中に埋め込む

耕すというこは カルチャーカルチャー
元からある物をを壊して作りかえているわけで
まあ 虫を蹴散らし草をなぎ倒し
ボー ガランゴロンと進むわけでありまする
ボー ガランゴロン ボー ガランゴロン
ゴロゴロ がらんごろん ボーーーーーー

俺のトラクターは赤いトラクター
買った買ったトラクター 新車で買ったトラクター
8年払いのトラクター

トラクターが虎喰ったわけではないが
トラクターの出現とともに虎は減っただろうに

そうだ 田起こしができるのだから
このトラクターで町おこしに出かけよう
町のアスファルトを叩き割ってくるのだ
俺は街でしこたま飲んで歩いてきたとき
コンクリートの下で泣いている土をみたのだった

アスファルトの上を雨が涙となって流れているのを
土が受け止めていたのを 俺は見てしまったのだ
しかし街の土は固くて歯が立たん ガランゴロンガランゴロンガタガタガタ
とっても歯が立たん ガタゴトガダゴド ガタゴトガダゴド ボー ボーッ
それでも町おこし

田植機

田植機が車庫にきちんと座っている
365日のうち 4日5日動いたあとずっと座っていた
みじろぎもせず

金属の手が苗を植える
カチャカチャいながら 飽くことなく
整然と植えていく

1年の数日働くために僕の側にいる 君
好きです

田植しかできない君の手は美しい
硬質な手で早苗を凌辱する
あっという間に苗を大地に孕ませる

君が来る前は 田んぼに早乙女が踊っていた
僕は君をつかまるために借金をした
いいのさ 1年の数日は働くだけでじゅうぶんなんだ
僕のために安らかに車庫で眠って居なさい

早乙女がいなくなったいま 今宵は君と過ごそう