出場ボクサーの感想

 

詩のボクシング山形大会について

新潟から参加の小次郎さんより


「詩のボクシング」山形大会事務局の皆さん大変ご苦労さまでした。
参加させていただいた一人として心から感謝いたします。

大会当日の準備と、予選会の準備など大変だったと思います。一段落したら少し休んでください。参加者から言うことでもないようですが、本当に大変だったと思います。

また、大会も楠さんや参加者の方など、色々な人に出会えて有意義でした。
詩の本来の私のスタンスとやはり多少違いがあると思いますが、大変よい経験になりました。
また、これまでと違った詩が書けるのではないかと、自分のピーマン頭に期待しています。

今回の大会について、私は家族にも詩の色々な形や考えなどが伝えられたことや、また本大会への出場の日程のハードなところなど、いい思い出になりました。参加された方人それぞれの思いはあると思いますが、今回の私はすべてのプロセスで詩そのものでした。家族で酒田へ行ったことや、28日午前中仕事があり、ぎりぎりまで出場を迷ったのですが、本大会の3分の時間の自分にとっての重要さが、酒田へ向かわせました。

今回の私の「お風呂音頭」これについても、どうしてもみなさんに聞いてもらいたかったもので、朗読についても、「詩のボクシングに作戦なし」と考え、自分のその時の状態、モチベーションの状態のままで語らしてもらいました。失敗でしたが、それも私自身の詩なのです。

本当に、仕事の中に埋もれる生活の中、こんなに貴重と思える時間が作れたことに、自分自身驚き、また山形・酒田の事務局の方にチャンスを貰ったことに感謝します。
本当にありがとうございました。
これからも長く大会が続きますよう、心から応援しています。
マンネリが一番の敵ですので、機会があればまた出させてください。


 

詩のボクシング山形大会レポート

イオン(岩田武昭)

 2001年7月28日お昼前、福島県郡山市からオートバイで高速を走 り山形市内の千歳山でそばこんを食べていた私の耳に飛び込んでき たのは、酒田南高校甲子園出場!のラジオ放送であった。
今日は、大変な盛りあがりになるな、朗読ボクサーとして拳にチ カラが入る。
そのままアクセルを握りしめ、酒田へ到着。山形大会 会場である酒田南高校は、興奮の渦であった。
高校球児の凱旋を横目に、朗読ボクサーの抽選が始まる。私の相手はなんと、山形県高校生詩のボクシングチャンピオンの犬石茉里 さん。もう、終わった。
彼女の可憐さと、5月の日本ライト級全国 大会の審査員という実績から敗退確実。
しかも自分が一番詩を聞い てみたい相手だった。そのうえ、会場は酒田南高校。
観客の大半は 高校生で、審査員も何人かは高校生だろう。こんなオヤジの言葉を受けとめてくれる訳がない。
今日は、福島県郡山市から280Kmのロングツーリングで終わりかとの諦め感に、今回初めて導入される敗者復活戦に向けて、高校生受けをするであろう宇宙人ものの「おぉトイレ」という詩を準備する。

  午後6時に開会が宣言され、本物のリングでの戦いとのことで、高校生ボクサーのスパーリングが行なわれ、戦いであることのプレッ シャーを感じながら、何度も何度も水を飲む。
1回戦第1ブロック、第2ブロックと順当に前回チャンピオンと高校生準チャンピオンが勝ち進む。既に詩のボクシングを経験している朗読者自身のハードルは根本から違っている。レベルが違う。これでは勝負にならな
い。第3ブロックで、リングに上がった私は、そのとき、観客に高校生の姿はまばらで、審査員にも高校生がいないことを知った。
どうやら同じ校内で始まってしまった、甲子園行きの凱旋報告会に客足を取られたようだ。よし、これでフェアだ、先行でもあるし、ク サらずに臭いトイレの詩を思いきり叫ぼうと、渾身のチカラで朗読を 行なった。
 観客の反応はいい。笑わせることもできた。あとは、個人的にも惹 かれる犬石さんの詩を同じリングの上という特等席で聞くだけだ。
しかし、凱旋報告会に横取りされ、残された貧弱で粗末な音響PA装置は、無残にも彼女細い声を拾わない。朗読という領域においては今回は、マイクを使うのは危険だったようだ。
 しかし、彼女には、この次ぎの詩を聞きたくなる、カリスマ性がある。そういう
意味で条件は互角だ。そしてジャッジメント。
結果として私の勝利大金星。彼女もリング下でトイレの詩に負けたので話しのタネになりますと微笑んでくれた。
 残る第4ブロックでは、前回の準チャンピオンの踊る農民詩人の阿 部さんが登場し、朗読+パフォーマンスとは何かを、まざまざと見せていただいた。
実は、7月27日にBS2で5月の全国大会の模様が放映予定だった ので、そこで傾向と対策を練ることができると思っていたのが、当日の新聞の放送欄に記載が無
く、インターネットを検索し、放送延期を知ることになり、手探りのままでのリング脇着席となったのだ。
 だから、何もかもが新鮮に見え、朗読のチカラとは、相手とのボク シングではなく、観客とのボクシングであり、真の相手は、隣のボクサーではなく、観客であることを編集なしで感じることができた。

 2回戦、本大会主催側を代表しての出場である山形詩人の高橋英司氏との対戦。
今度は後攻、マイクを使った先行の高橋氏の声が、リングの上だとよく聞えない。なんだか勝てるのか勝てないのか、解らないまま、やはりこれは観客とのボクシングだと「極秘指令、円谷プロ」という国際問題の詩を朗読。しかし1回戦と同じ宇宙人ものが私の個性とは受けとめてもらえず、敗戦。ここに今日のツーリングは無事終わったのである。

 準決勝での戦いは、まず、高校生準チャンピオンの菅原秀一君と、前回チャンピオンの鈴木康之氏、貫禄で鈴木氏の勝利であったが、菅原君はNHKの「しゃべり場」に出演しているそうで、カメラが追いかけ彼へのインタビューが繰り返され、ルポを作っていたので近いうちにテレビで感想が聞けると思う。
そして、次ぎは山形詩人の高橋英司氏と前回準チャンピオンの踊る農民詩人の阿部利勝氏。これも阿部氏が朗読後の制限時間まで繰り広げるパフォーマンスで勝利、結局第1回と同じ鈴木、阿部対決となってしまった。

 決勝戦では鈴木氏は大陸への思いを込めた壮大な詩を詠い、阿部氏は、高校生詩人に勝てないと思って捨て身で用意してきた援助交際という詩で自分を援助して欲しいと、リングの上で服を脱ぎ白いブリーフひとつになって身もだえた。
   まさか会場が高校で、そこまでやっていいのかと目を疑うパフォーマンスであったが、真剣な阿部氏の目から、心を擬態化して、体で詩を今ここで書いているんだと聞えてくる。書くことはこれくらいの恥ずかしさを越えているはずだとの叫びを、私は感じとった。

即興詩では、鈴木氏が1000円札、阿部氏が1円玉で、鈴木氏が1000円札から50銭の時代に飛んでしまったのに対し、阿部氏は1円を拾わな い自分が1粒の米を大切にしろと叫ぶ矛盾を詠った。
 考える時間もふくめて3分間ということで、考えながら二人は詠っていく。ここ
で私は気がついた。決勝戦に残った詩人は、まぐれなんかではない、始めから即興詩を紡げるだけの糸と針を持っていて、糸を拳に巻いて痛みを抑え、針で自分の拳を刺激していきたから勝ち抜けてきたのだ。

 結果として、前回と同じ鈴木康之氏がチャンピオンとなった。この 結果は順当だと思うが、これだけチカラの差がある、明る過ぎる巨星は、他を輝きを飲み込んでしまい、今後の山形大会では、他の詩人にチャンスがないのではと感じた。他の大会では、前回の覇者には1回休みをさせることを検討しているとも聞いた。全国大会へは、チャンピオン1名しか出れなくなったことを考えると、次回大会では考慮すべき部分である。
しかし、解決策がない訳ではない、もし、福島大会が開催されたら、 山形の皆さんも参加すればいいのだ。福島県民の私が山形大会に参加 したように。